2026.01.03:第18回 私の回顧録
新たな展開
〜まさかの宣告〜
みなさん、こんにちは!
いつもTexStylistの「糸偏コラム」を読んでいただき、ありがとうございます。
前回の第17回では、
「営業だけでは限界がある」という実感から、
私自身が商品企画に深く関わるようになり、
初めて“つくる側”として新商品に挑戦したお話をお届けしました。
素材を探し、デザインを考え、コンセプトを言葉にし、
いよいよ企画が動き出す――
そんなところで、物語はいったん区切りを迎えました。
そして今回、第18回。
その“続き”としてお話しするのは、
まさに物語の空気が一変した、忘れられない出来事です。
ドラマでいえば、盛り上がってきたところで
突然画面が暗転し、
「えっ、ここで!?」というタイミングで
テロップが流れる、あの瞬間。
今回は、そんな“まさかの宣告”を受けた日のことを、
少しだけ肩の力を抜きつつ、
でも正直な気持ちで振り返ってみたいと思います。
◾️ いつもと変わらない朝
その日も、特別な予感はまったくありませんでした。
いつも通り電車に乗り、
いつも通り長崎屋本社へ向かい、
いつも通り商談室へ。
頭の中で考えていたのは、
「今日のお昼、何を食べようかな?」
という、どうでもいいけれど切実な問題(笑)。
人の人生が大きく動く日というのは、
案外とこんなふうに、
驚くほど普通に始まるものなのかもしれません。
◾️ 商談室に漂う、いつもと違う空気
エレベーターを降り、
商談室に入った瞬間、
小さな違和感を覚えました。
いつもなら、
明るい笑顔で迎えてくれる
アシスタントバイヤーの女性。
その日の彼女は、
どこか硬い表情で、
言葉を選ぶように立っていたのです。
「ちょっと……お話ししたいことがありまして」
この一言で、
私の頭の中は一気にフル回転。
え?
なに?
何かやらかした?
最近の商談、
提出書類、
納期、価格、条件……。
“やらかしリスト”が
高速で脳内を駆け巡ります。
◾️ 告げられたのは、取引終了の言葉
けれど、彼女の口から出てきたのは、
私の想像をはるかに超える内容でした。
「経営状況を考え、
誠に残念ですが、
御社とのお取引を終了させていただくことになりました」
……一瞬、言葉の意味が理解できませんでした。
取引終了。
それは、
会社同士の“突然の別れ話”。
頭の中が真っ白になり、
なぜかBGMだけが流れ始める。
重くて、暗くて、
ドラマでよく聞く、あの感じの音楽です(笑)。
◾️ 理解できるけれど、受け入れきれない現実
理由は明確でした。
経営改善のため、
取引先を絞り、
コスト削減を図る。
企業としては、
極めて合理的で、
正しい判断です。
バイヤー経験のある私には、
その事情も、
苦渋の決断であることも、
よくわかりました。
でも――。
理解できることと、
受け入れられることは、
まったく別です。
なにせ、
当時の私と私の会社にとって、
長崎屋はメインの取引先。
ここがなくなるということは、
つまり、
私の仕事そのものが、
大きく揺らぐということでした。
◾️ プロとしての顔
それでも私は、
顔には出さないように努めました。
「承知しました。あくまで商売ですから」
自分でも驚くほど、
落ち着いた声が出たと思います。
内心は、
嵐のように荒れ狂っていたのに。
今振り返ると、
あの瞬間の自分を、
少しだけ褒めてあげたい気もします。
◾️ 商談室を出たあとに始まった反省会
商談室を出た途端、
心の中で反省会がスタートしました。
「自分の努力が足りなかったんじゃないか」
「もっと違う提案ができたんじゃないか」
「そもそも、会社の体制が……」
……いやいや、
それを言い始めたらキリがない。
自分を責めても、
状況は何も変わりません。
◾️ 一本の電話
感情を整理する間もなく、
私は会社に電話を入れました。
取引終了の報告。
そして、
「これからどうするか」
という、
極めて現実的な話。
声は冷静でも、
内心は
「どうやって切り抜けるの、これ……」
と、焦りでいっぱいでした。
◾️ 出した結論──退職という選択
話し合いの末、
私は会社を辞める決断をしました。
正直なところ、
どこかで
「潮時かもしれない」
と感じていたのも事実です。
商品企画に関わり、
ものづくりの面白さと厳しさを知り、
自分の人生を、
次のステージへ進めたいという思いが、
少しずつ強くなっていました。
◾️ 1年半で得た、経験
退職は会社都合という形になり、
退職金も支給されました。
ありがたいことです。
引き継ぎを終え、
1年半という在籍期間に、
静かに区切りをつけました。
短い時間ではありましたが、
得たものは本当に大きかった。
商談の現場で学んだこと。
商品企画の難しさ。
そして、
「ビジネスは時に非情である」という現実(笑)。
◾️ 不安とワクワクが同時にやってきた
退職後、
不安がなかったと言えば、
それは嘘になります。
でも不思議なことに、
それ以上に
ワクワクしている自分もいました。
「さて、次は何をしよう?」
「自分の強みって、なんだろう?」
「もっと洋服に深く関われる道は?」
そんな問いが、
毎日のように頭の中を巡ります。
◾️ 転んでも、ただでは起きない
この出来事を、
ただの“不運”で終わらせるつもりはありませんでした。
これまでの経験を活かすチャンス。
そう考えた方が、
きっと前に進める。
人生、
転んでもただでは起きない。
……どころか、
起き上がって、
少し走ってみるくらいの気概が、
必要なのかもしれません。
◾️ そして、物語は次へ
今回は、
突然の取引終了と、
それに伴う私の決断についてお話ししました。
次回は、
この会社での経験を通して
私が何を学び、
それがどんな形で次につながっていったのか。
洋服との関わりは、
こうして途切れることなく、
少しずつ形を変えながら続いていきます。
次回の糸偏コラムも、
ぜひお楽しみに。