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Textile Industry Column糸偏コラム:自由な視点
私の回顧録

2026.01.02:第17回 私の回顧録

商品企画
〜ついに、この時が・・・〜

みなさん、こんにちは!
いつもTexStylistの「糸偏コラム」を読んでいただき、本当にありがとうございます。 こうして毎回お付き合いいただけることが、何よりの励みです。

前回のコラムでは、インナーメーカー時代に私が強く感じていた 「どんなに営業が頑張っても、商品そのものに力がなければ売れない」 という現実についてお話ししました。

営業として現場に立ち続ける中で、 “売る努力”だけでは限界があること、 そして本気で商品企画に向き合わなければ、会社の未来は拓けないこと。 その思いから、社内での商品企画会議が少しずつ始まっていった―― そこまでが、前回のお話でした。

今回の第17回は、その続きです。 いよいよ私自身が、新商品の企画に深く関わることになったときの出来事を振り返ります。私の中でも特に印象深い出来事――そう、「商品企画」に初めて関わったお話です。

入社してまだ日も浅かった私が、“新商品を企画する側”に立つことになるなんて。当時の自分に教えてあげたら、きっと目を丸くして驚いていたと思います。 今回は、そんな少し背伸びをした挑戦と、その裏側で感じていた不安やワクワク、そして小さな成長の記録を、できるだけ正直に、そしてフレンドリーにお話ししていきます。 「へぇ、そんなことがあるんだ」「なんだか微笑ましいな」と、肩の力を抜いて読んでいただけたら嬉しいです。

企画

◾️ 社内企画会議の延長線にあった、次の一歩

正直に言いましょう。言い出しっぺだったとはいえ、 「新商品の企画、やってみない?」という話が出た瞬間、私の頭の中は大きな「!?」でいっぱいになりました。

え、ちょっと待ってください。 私、まだ入社して1年も経っていませんよね? インナーに関する知識も十分とは言えないのに、企画なんて、もっとベテランが担当する仕事じゃないんですか?

そんな心の声を必死に飲み込みながらも、不思議と「断る」という選択肢は浮かびませんでした。 なぜなら同時に、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じていたからです。

「自分が考えた商品が、形になって、誰かの手に届くかもしれない」 そんな経験、そう簡単にできるものではありません。

これまで、売り場を見て、商品を扱って、お客様の声を間接的に聞いてきた私にとって、“つくる側”に回ることは、ずっと遠くにある世界のように思えていました。 でも同時に、だからこそ挑戦してみたい。 今の自分にできることは小さくても、これまで見てきたこと、感じてきたことを、自分なりの視点で形にしてみたい。 そんな気持ちが、じわじわと勝っていったのです。


◾️ 「売れる理由」を探すための市場調査

商品企画と聞くと、いきなりデザイン画を描いたり、コンセプトを考えたり…そんなイメージを持っていましたが、現実はもっと地道なところから始まりました。

最初に取り組んだのは、市場調査です。 とはいえ、難しい資料を山ほど読むような机上のリサーチではありません。 当社のデザイナーと一緒に、実際の売り場を歩く――いわば“現場主義”の調査でした。

都内の百貨店、駅ビル、ファッションビルをいくつも回り、売り場の人の流れや、商品をじっくり観察する日々。 どんな商品が、どんな並びで、どんなお客様に向けて提案されているのか。

当社の主力はミセス向けの商品ですが、あえて若年層向けの売り場やセレクトショップにも足を運びました。 「自分たちのフィールド」だけを見ていては、新しい発想は生まれない。 そんな思いがあったからです。


◾️ 売り場で気づいた、インナーの変化

そんな市場調査の中で、私の目を釘付けにしたのが、「ニューインナー」と呼ばれる新しいジャンルのインナーウェアでした。

売り場を見た瞬間、正直、驚きました。 キャミソールが、まるでTシャツやトップスのように、堂々とハンガーに掛けられている。

素材は柔らかく、色使いはカラフル。 デザインもシンプルなものから、レース使いが印象的なものまでさまざまです。

これはもう、“肌着”ではありません。 完全にファッションアイテムとして扱われていました。

「見せインナー」という言葉は知っていましたが、実際の売り場でここまで存在感を放っているとは思っていなかったのです。

思わず口からこぼれたのは、 「えっ……これ、普通に可愛い……」 という独り言でした(笑)。

その瞬間、頭の中で小さなスイッチが入った気がしました。

「これ、自社でできないかな?」


◾️ 小さなメーカーだからこそ考えた視点

もちろん、ただ流行っているから真似をする、という話ではありません。 大切なのは、“自社らしさ”と“新しさ”をどう両立させるか。

当社のお客様は、長く洋服を楽しんできた大人の女性が中心です。 派手すぎるものや、若さだけを売りにした商品は、必ずしもフィットしません。

でも一方で、「インナーはこうあるべき」という固定観念に縛られすぎていては、新しい価値は生まれない。

そのバランスをどう取るか。 このテーマは、今回の企画を通して、ずっと私の頭の中にあり続けました。


◾️ 商品力の土台をつくる、素材探し

方向性が見えてきたところで、次に取り組んだのが素材探しです。

デザイナーと相談し、「まずは生地からインスピレーションを得よう」という結論になりました。 素材は、商品づくりの土台。 ここで妥協してしまうと、すべてが中途半端になってしまいます。

市内の生地問屋を巡り、ひたすら見て、触って、比べて。

一見すると似たような素材でも、触り心地や落ち感、光の当たり方で印象はまったく違います。 問屋さんと立ち話をしながら、背景や特徴を聞くのも、大切な時間でした。

素材探し

◾️ 機能性と心地よさを兼ね備えた素材

そして、ついに出会ってしまったのです。

「美白効果」「保湿効果」「UVカット」 まるで美容クリームのような機能を持つ素材。

機能性だけでなく、触れた瞬間にわかる、しっとりとした柔らかさ。 透け感も上品で、インナーとしても、見せるアイテムとしても使えそうでした。

正直、この素材に出会った瞬間、 「これだ……」 と、心の中で確信していました。


◾️ 素材が導いてくれた企画の方向性

「ニューインナー」という切り口に、この機能性素材。

この組み合わせが、私の中で一気に広がっていきました。

肌に直接触れるものだからこそ、安心感と心地よさは絶対に譲れない。 でも、それだけで終わらせたくない。

“着ることで、ちょっと気分が上がる” そんなインナーをつくりたい。

コンセプト

◾️ 「売り場で浮かない可愛さ」を目指して

素材が決まれば、次はデザインです。 ここで私が大切にしたのは、「頑張りすぎていない可愛さ」でした。

可愛いけれど、甘すぎない。 主張しすぎないけれど、ちゃんと気分が上がる。

カラーは、ペールピンク、シャーベットオレンジ、サックスブルー。 まるでお菓子のような、やさしくて軽やかな色合いです。

ディテールには、トーションレースやナロー仕上げを取り入れ、さりげない表情をプラス。

試作サンプルを手に取ったとき、思わず 「……かわいい」 と呟いてしまったのは、ここだけの秘密です(笑)。


◾️ コンセプト誕生|インナーに市民権を

ここまで考えてくると、自然とコンセプトが言葉になりました。

それが、 「インナーに市民権を!」

これまで、見えない存在だったインナーを、 “見せてもいい” “むしろ、見せたい” そんな存在にしたい。

インナーは裏方。 そんな固定観念を、少しだけ揺さぶってみたかったのです。

もちろん、快適さや機能性は大前提。 その上で、“+αの楽しさ”を添える。

それが、今回の企画で私が目指したゴールでした。


◾️ 営業目線で挑んだ、初めての企画プレゼン

企画が形になり始めると、次に待っていたのがプレゼンです。

デザイナーに協力してもらい、いくつかのサンプルを用意しました。 そして私は、視覚的にイメージを共有するための、いわゆる「イメージマップ」を作成しました。

さらに、初めてのコスト計算にも挑戦。 生地代、付属代、縫製工賃、ロス分……。

数字とにらめっこしながら、 「商品って、こんなにも多くの要素で成り立っているんだ」 と、改めて実感しました。


◾️ 企画が動き出す、その直前で

準備は整い、 「さあ、いよいよプレゼンだ!」 と気合を入れていた、その矢先――。

まさかの展開が待っていたのです。

えっ? なになに? どういうこと?

……というところで、今回はここまで。

この企画は、前回お話しした 「営業だけでは限界がある」という実感の、まさに延長線上にありました。

売り場を知り、数字を知り、 だからこそ“商品そのものを強くしたい”と思ったこと。 その想いが、少しずつ形になり始めた瞬間でもあります。

とはいえ、企画は思い描いた通りには進みません。 準備万端だと思っていたこのタイミングで、 思いもよらない展開が待っていました。

その出来事が、この後の私の仕事観を大きく変えることになります。

続きは、次回の糸偏コラムで。 「小さなメーカーの商品企画が、どこへ向かっていったのか」 ぜひ、引き続きお付き合いください。



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