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私の回顧録

2026.01.29:第44回 私の回顧録

仕入れ編
〜出版社との関わり〜

みなさん、こんにちは。
前回のコラムでは、ホームページを立ち上げる際に影響を受けたことについてお話ししました。

仕入れ担当として、売るために、届けるために、どこまで踏み込めるのか。 その延長線上にあったのが、今回お話しする「出版社との関わり」です。

当時の私は、仕入れという仕事を、 「良い商品を見つけ、数量を決め、条件を整える」 そこまでが役割だと考えていました。

広告は広告の担当が考えるもの。 雑誌は、商品を載せてもらう“場所”。 正直に言えば、そんな距離感だったと思います。

けれど、ある時期から、その境界線が少しずつ曖昧になっていきました。
そして結果的に、出版社との関わりは、私自身の仕事の捉え方を、大きく変えていくことになります。

出版社

◾️ 広告担当を任された日|仕入れと無関係ではなかった

入社して3年目くらいだったでしょうか。 仕入れの仕事にも、ようやく慣れてきた頃のことです。

ある日、上司から何気なく、こんな言葉をかけられました。

「次の広告から、担当してみて」

正直なところ、当時は仕入れの仕事だけでも手一杯でした。
広告は別の担当者がいたのですが、その方が退社することになり、私に話が回ってきたのです。

広告は仕入れとは別の仕事。 そう思っていたので、戸惑いもありました。

ただ一方で、当時はまだ漠然としながらも、 「売るための武器を一つ手に入れられるのではないか」 そんな予感のようなものが、頭の片隅にありました。

実際に取り組んでみると、 広告は決して仕入れと無関係な仕事ではないことに気づかされます。

どの商品を、どう見せるのか。 どんな言葉なら、伝わるのか。 どんな写真なら、手に取ってもらえるのか。

それは、 「なぜ、この商品を仕入れたのか」 を、もう一度、自分自身に問い直す作業でもありました。


◾️ 雑誌広告という世界|売る前に、伝える

当時の雑誌広告は、いわゆる応募型が中心でした。 雑誌を見た読者が、 「この生地、気になるな」 と思ったら、ハガキでサンプルを請求する。

今思えば、とても丁寧なやり方ですし、 当時としては、ごく一般的な方法でもありました。

ただ、どこか物足りなさを感じていたのも事実です。

「この先に、もう一歩、何かできないだろうか」

そんな思いが、次の一手を考えるきっかけになっていきました。


◾️ 誌面通販という挑戦|生地を“買える”雑誌へ

そこで始めたのが、誌面通販でした。 雑誌を見て終わりではなく、 その場で生地を購入できる仕組みをつくる。

今でこそ当たり前に感じるかもしれませんが、 当時としては、かなり新しい試みでした。

誌面構成も、これまでとは変えました。 写真の撮り方、色の見せ方、 キャッチコピーの言葉選び。

「売りたい」よりも、 「使う人の頭の中に、完成形が浮かぶか」を意識しました。

この生地で、どんな服ができるのか。 どんな時間を過ごす一着になるのか。

そこまで想像してもらえたとき、 生地は“素材”から“物語”に変わる。 そんな感覚を、この頃に強く持つようになります。


◾️ 生地が人の手に渡る瞬間|仕入れ担当としての実感

誌面通販を始めてから、 お客様の反応が、以前よりも身近に感じられるようになりました。

届いた生地で、服を仕立てた方からの声。 完成した洋服の写真。 「この生地で、こんな一着ができました」

それらを見るたびに、 仕入れの仕事の意味が、少し変わっていきました。

仕入れとは、 倉庫を満たすことではなく、 誰かの“つくる時間”を支えること。

そんな実感が、静かに積み重なっていったのです。


◾️ 『FEMALE』との出会い|編集長と選ぶ生地

出版社との関係が、さらに深まったのは、 ブティック社の『FEMALE』とのタイアップ企画でした。

この企画が、また少し変わっていて。 編集長と一緒に、生地メーカーを回り、 「編集長が本当に気に入った生地」を選ぶ。

売れるかどうかよりも、 「これ、素敵ですよね」 その感覚を、まず大事にしました。

編集長の視点は、やはり鋭く、 同時に、読者にとても近いものでした。

「この生地なら、こんな服が作りたくなる」 その言葉一つひとつが、 仕入れ担当としての私の視野を広げてくれました。


◾️ 雑誌と連動する販売|イメージが先にある強さ

『FEMALE』では、 生地の紹介だけでなく、 その生地を使った洋服のアイデアも誌面で展開しました。

完成形が見える。 着ている姿が想像できる。 だから、作ってみたくなる。

雑誌と販売が自然につながったことで、 生地は、より生き生きと読者の手に届いていきました。

さらに、この企画では、 特別に制作した生地サンプルの販売も行いました。

「誌面を見て、同じものを作れる」

そのワクワク感が、 生地の価値を、もう一段引き上げてくれたように思います。


◾️ 家族と仕事が交差した日|娘がモデルになった話

印象的だったのは、 誰も“教えてやる”という態度を取っていなかったことです。

質問者を否定せず、 「いいところに気づきましたね」 「そこ、実は大事なんですよ」

そんな言葉が、ごく自然に交わされていました。


◾️ 見ているだけでも、学びがあった

ここで、少し個人的なエピソードを。

『こどもブティック』に、 私の娘がモデルとして参加したことがあります。

撮影は、ブティック社の本社。 全国から集まった、5組ほどの親子。

説明の中で、強く印象に残っている言葉があります。

「泣いてしまうと、撮影はできません」

3歳前後の子どもにとって、 撮影現場は、決して楽な場所ではありません。

実際、泣いてしまい、 撮影できずに帰られたご家族もいました。 遠方から来られていたことを思うと、胸が痛みました。

幸い、娘は最後まで撮影を終え、 誌面にも掲載されました。

この経験を通じて、 雑誌が出来上がるまでの裏側と、 そこに関わる人たちの真剣さを、 家族としても、仕事としても、強く感じました。

モデルデビユー

◾️ 文化出版局との仕事|知識を“形”にする

ブティック社だけでなく、 文化出版局とのお取引も、私にとって大きな学びでした。

特に印象深いのが、 布地図鑑の監修に関わったことです。

生地の特徴を、どう伝えるか。 用途を、どう整理するか。 言葉と写真で、どこまで正確に表現できるか。

仕入れとしての知識を、 改めて言語化する作業は、 想像以上に難しく、そして刺激的でした。

「分かっているつもり」と 「伝えられる」は、まったく違う。

この仕事を通じて、 生地を見る目が、さらに一段深まった気がします。

布地図鑑

◾️ 文化服装での催事販売|直接聞こえる声

文化服装学院での催事販売も、 忘れられない経験です。

学生さん、先生、プロの方。 さまざまな立場の人が、生地を手に取り、 率直な意見をくれる。

「この生地、扱いやすいですね」 「これは、少し難しそう」

その一言一言が、 仕入れ判断のヒントになりました。

机の上の数字では見えないものが、 そこには確かにありました。


◾️ 出版社との関係が教えてくれたこと

出版社との仕事を通じて学んだのは、 「売ること」以上に、 「伝えること」の重要性でした。

生地の背景。 使い手の目線。 完成形のイメージ。

それらがそろったとき、 商品は自然と、人の手に渡っていく。

この感覚は、 のちのホームページづくりや、 TexStylistの考え方にも、確実につながっています。

ただ、当時は 「何か新しいことをしよう」 と肩肘張っていたわけではありません。

目の前の仕事に、 少しだけ工夫を重ねていった結果、 気づけば、ユニークな形になっていた。

それくらいの距離感が、 今振り返ると、ちょうど良かったのかもしれません。


◾️ おわりに|感謝と、次への一歩

広告企画、誌面通販、タイアップ、監修、催事販売。 出版社の方々との関わりは、 仕入れ担当だった私に、 想像以上の経験を与えてくれました。

この場を借りて、 改めて感謝をお伝えしたいと思います。

次回は、 仕入れ担当として、初めて機屋を訪れたときの話です。 現場で感じた空気や、 生地が生まれる瞬間について、 お話しできればと思っています。

最後までお読みいただき、 ありがとうございました。



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